長い備長炭、短い備長炭、太い備長炭、細い備長炭、断面が丸い備長炭、角ばった備長炭、粒状に細かくなった備長炭。さらには、お風呂に入れる備長炭、ご飯を炊く時用の備長炭、消臭用の備長炭、燃料用の備長炭、などなど。
さて、そんなにたくさんの中からどうやって備長炭を選べばいいでしょうか?
「何か違いがあるのですか?」
と、たずねられることがよくあります。
答えはとっても簡単!
形が違うだけで、どの備長炭もほぼ同じなのです。
備長炭には、空気やお水の浄化・消臭、遠赤外線効果、ミネラル放出・湿度調整等、いろいろな効果がありますが、どんな形の備長炭でも同じ効果があります。
お客様とお電話でお話していると、飲料用、お風呂用等、用途に分けて商品化しているものは、種類によって効果が違うと思っている方がけっこういらっしゃいます。
うーむ、そう思われても不思議ではないかもしれません。形もお値段もバラバラですものね。
形が違うのは、1本の木を切り分けて炭に焼くため、木のどの部分かによってカットの仕方、太さが変わるためです。原木が同じなら、形は違っても焼き方はほぼ同じ、紀州で焼かれた紀州備長炭なのです。
ただ、原木の種類によっては若干の違いはあります。
◆紀州備長炭 3種類の原木
「紀州備長炭だから原木は馬目樫ですよね?」
と聞かれることがあるのですが、そのご質問自体が、正解は100点満点のうちの60点ぐらいでしょうか。
確かに紀州で焼かれる備長炭の原木は、馬目樫の木が大半なのですが、樫の木や、その他の硬い木を使って焼くこともあるのです。
『雑炭』とよばれる備長炭は、椿やそばなどの何種類かの木が混ざったものを炭に焼いたもので、昔は地元の人が燃料として使っていました。今はもうほとんどこの雑炭は焼かれず、仕入先の炭問屋さんにもたまに入ってくるぐらいのものです。
紀州備長炭の原木は大半が馬目樫や樫の木です。
馬目樫(写真右)は木なのに、水の中に入れると沈んでしまいます。それほど木目が細かく硬い木です。焼きあがると光に当たって淡く光り、インテリアとしても申し分ないほど、とっても綺麗な備長炭になります。
炭焼屋さんからすると、備長炭の品質は火をつけて燃やした時の炎の良さ。
樫よりも馬目樫備長炭の方が、火をつけた後も火力が強く一定に安定し、火持ちもやや長めです。
とはいっても、火力が強けりゃいいものでもありません。炭火の素人が燃料として使うにはあまり火力が強すぎても扱いにくいため、あえて素人使いに合うような焼き方をされている炭焼職人さんもいらっしゃいます。
◆大きさ形の違い
炭焼き職人さんは、山に生えている馬目樫や樫の木を自分で切ってきたり、備長炭用の木を販売している業者から購入して炭を焼きます。
それを1つの窯で、どちゃ~っと大量に焼きます。同じ窯に入れられた原木は、どのサイズの木も同じように炭化して炭になります。
窯の場所によって温度差や火のまわり方の違いがあったりするのをどうやって仕上げるかは、窯からこだわって作っている炭焼き職人さんの腕の見せ所。特に細い炭は、焼く技術がなければ燃え尽きて、炭にはならずにその場で灰になってしまいます。
そんな風に焼き方も細かい話になればいろいろあるのですが、どれも同じ窯で焼き上げられた備長炭です。備長炭としての品質を保たれているかどうかの検品をクリアして世の中にで回っている備長炭。大きさや形が違うからといって、お風呂に使う備長炭が消臭に利用出来ないといった違いはありません。
◆どうして用途によって商品が違うのか?
「じゃあどうしてお水用、お風呂用、燃料用等いろいろ分かれているの?」
長い長い備長炭をお風呂に入れたり、ささくれたり縦割れした備長炭をミネラルウォーター作りに使っても構わないのですけれど…
私だったら、あまりやりたくありません。
例えば、ミネラルウォーターを作る時や、ご飯を炊く時。備長炭は鋼鉄のように硬い炭なので、そう簡単にボロボロ割れるということはないのですが、100%細かい粉が落ちないとは言い切れません。縦割れした備長炭は炭の粉が落ちやすいです。
口に入るものに使う炭ですから、表面に割れ目がある備長炭よりは、粉が落ちにくい表面がツルンとした備長炭の方が向いています。
もうひとつの理由は備長炭を使う量。
水道水から備長炭でミネラルウォーターを作るには1リットルの水に約100g前後、ご飯を美味しく炊くには1合につき約10g、お家のお風呂に入れるなら一般の浴槽で約1kgといったように用途によって使う備長炭の量の目安が大体決まっています。
「備長炭ってご飯を炊く時に入れると美味しくなるって聞くけど…」
「バーベキューをやる時に使おうと思ってるんだけど、どれぐらいの量があればいい?」
使いたい用途が決まっていて、使い方や、使う量まではあまりよく知らない方のために、用途に応じた最適な形、大きさ、量で詰め合わせたものが、用途ごとの名前がついた商品なのです。
◆私ならこう使う!備長炭の選び方、使い方
どんな風に使いたいかがハッキリしていれば、備長炭だけを量り売りで買って、使いたい用途に合わせて形で選び分けて使えます。備長炭を使い慣れていない方は、最初は用途別の備長炭を使うとわかりやすいと思います。が、私が備長炭を買う時は、たいてい炭だけを買って使います。
用途に合わせた選び方のポイントをご紹介しましょう。
- ご飯・お水 … できるだけ縦割れ・裂け目が少ない備長炭。使う量が少なめなので、小さいサイズものがいいでしょう。
- マドラー … 一番細い、極細備長炭が最適です。長い場合はグラスの長さに合わせて金槌で叩いてわっても構いません。
- お風呂 … 天然の入浴剤として使えます。煮沸をして使うため、お鍋に入るサイズの備長炭を選びます。
- インコの止まり木 … 爪とぎが要らなくなると、最近インコを飼われている方に人気の止まり木代わりの備長炭。かごに合わせて長さを選びましょう。大きな鳥カゴで長さが足りない場合は特別に長い備長炭をカットして利用することもできます。
- 燃料として … バーベキューコンロや七輪を使うなら、火付け用に小さめの備長炭、火がついてから火を維持するために、やや大きめの備長炭を混ぜて用意すると便利です。焼き鳥屋さんなど大きな専用コンロがあって常に火を維持したいなら、長めの備長炭が便利です。
- 消臭・空気清浄 … 正直な話、消臭や空気清浄に使うなら、お水作り・炊飯・お風呂に使った後、使用目安が過ぎた備長炭をリサイクルするのがオススメです。リサイクルのやり方は『使いつくそう 何用途にも使える備長炭のリサイクル方法』に詳しく書いています。
- 土壌改良 … 園芸で土壌改良に使うなら、備長炭の粉や小さく砕いたものを使います。これもリサイクルした備長炭で十分! 消臭・空気清浄に使ったものを、金槌で細かく砕いて、鉢底や土の中に埋めてもいいですよ。
備長炭は、本当に捨てるところがありません。
上手に炭を選んで、最後まで使い尽くして下さいね。